進化する桝俉の京漬物
『桝俉』の京漬物
漬物は加工食品として最も古い歴史を持ち、伝統食品として育まれてきました。
漬けることにより、野菜の旨みが増し、保存性を高めます。ビタミンや食物繊維をはじめ、ミネラル、カルシウム、有機酸が豊富に含まれており、整腸作用や免疫力向上効果もあり、美容や健康の増進につながります。
2013年12月、「和食:日本人の伝統的な食文化」がユネスコの無形遺産に登録されるなど、世界に誇る栄養バランスの優れた健康的な日本の食生活には、漬物とご飯は基本であり、必要不可欠です。
漬物文化は全国各地で気候風土、文化を反映した生活の知恵の中からつくられてきました。例えば、徳川御三家には、梅の産地があり、梅干は常備薬として用いられました。また、東北地方においては、冬ごもりの為に保存食として発達してきました。
京都は四面、山に囲まれ、海に遠く、塩の貴重さから多塩を好まない浅漬が生まれました。京漬物の代表・千枚漬です。長期保存を目的とせず、薄味で、繊細に漬け上げています。調味の中に含まれる昆布出汁は神事ごとや精進料理に由来します。
冬の底冷えに代表される独特の気候、盆地で朝晩と昼間の寒暖差があり、陶器づくりに適した上質の土壌と豊かで清らかな水が育てた京野菜は、千年の都が産み出した食文化の源です。味も良く、色や形も多種多様で個性的な素材は、様々な食べ方を発達させました。
京野菜は元より、全国から、季節により産地を選び、常に一番良い旬の野菜を仕入れるように心がけています。
四季折々の新鮮な野菜に手を加え、独特の旨み・風味を生み出し、従来の保存食であった漬物を伝統の製法に独自の創意工夫を重ね、洗練された美意識・技術・調理方法へ高めてきました。
伝統は時代によって変化していかなければ伝承できません。伝統を受け継ぐだけでなく、お客様のニースを適切に感じ取り、時代に応じた手法で、常に進化し、全国に京都の漬物文化を発信していきます。
近年は、野菜本来の美味しさを活かし、塩分控えめで薄味。彩りも美しいヘルシーなサラダ感覚の浅漬をバラエティー豊富に開発しています。
「京の台所」錦市場の店舗・奥の作業場で、熟練の職人が自然の恵みに感謝し、真心を込めて、素材の持ち味を活かすことを信条に、味を付けるのではなく、添えることを大切に、手間暇を惜しまず、丹念に漬け込みました。樽出しの鮮度そのままにお届けします。
京ブランド食品
京都府食品産業協会が認定する京ブランド食品は、山紫水明の豊かな自然と1200年の歴史に培われた京都の地で、職人たちが素材の持ち味を生かし、使う水から道具まで、すみずみまで心を配り、丹精込めてつくった安心・安全な「ほんまもん」の味です。
桝俉の「千枚漬」「すぐき」「しば漬」が認定されています。
三大伝統京漬物千枚漬
千年の都で生まれた伝統の味
桝俉の千枚漬
京野菜のひとつである聖護院かぶらと、利尻昆布の旨みが織り成す上品で優雅な味わいの逸品です。あっさりとご賞味頂ける冬の京漬物の代表です。
宮中料理から生まれた
京都の冬の千枚漬
今から百数年前の江戸時代末期、宮中の料理人が経験をもとに、そのかぶらの漬け方、風味、調理法の工夫を重ねました。さらに原料となる上質のかぶらを求めて、ようやく聖護院の里のかぶらを使った漬物を作り上げました。
かぶらをひと樽に千枚になる程、薄く削ったということから「千枚漬」と名付けたと伝えられています。
厳選素材と熟練の技が創り上げる
桝俉の千枚漬
旬の時期には、京都丹波地方の契約農家で特別な栽培方法で大切に育てられた聖護院かぶらをその日漬け込む分だけ仕入れ、北海道産の利尻昆布を使い、昔ながらの製法で丹念に漬け込み、格調高い味わいへと仕上げていきます。
長年の経験を必要とする熟練の技を守り、伝統の味を今に伝えているのです。
手作業で漬け込む千枚漬
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1
京都の冬を代表する雪のように白く大きな、上質の聖護院かぶらの皮を厚くむきます。
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2
大きな特製の鉋(かんな)を使い、一枚一枚薄くスライスし「千枚ほど」にします。
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3
樽の底からかぶらを丁寧に並べます。
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4
かぶらを一列に並べ、塩をふるという手作業を繰り返します。かぶらの状態を見極め、底に塩が溜まりやすいので、下の方を薄く、上の方は流れやすいので濃く。塩加減が大切です。
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5
二、三日後、樽を逆さにし、余分な水分や塩分を取り除き、かぶら本来の旨みが引き出され、調味の吸収を良くします。そして今度は、北海道の利尻昆布と家伝の調味液(砂糖・酢等)を交互に重ねて本漬します。
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6
二、三日後、樽から出すと舌触りが滑らかで、歯ごたえがあり、上品で優雅な味わいの逸品に仕上がります。伝統野菜・壬生菜の浅漬と一緒に召し上がると格別です。また、いくらやスモークサーモン、ロースハムとも相性抜群です。お歳暮などの贈答品や土産としても人気です。
三大伝統京漬物すぐき
京名産 すぐき
京都上賀茂神社の社家で栽培され、自家用につけられていたものが公家への進物に用いられ、それが広まり千枚漬とならんで世人に親しまれるようになりました。
品質の良いかぶらをつくるために、土づくりに始めり、手間暇を惜しまずかぶらを栽培し、代々伝わる伝統技法で、すぐきの漬け込みを行っています。
熟成した独特の香りと酸味が持ち味
桝俉のすぐき
近年、豊富な植物性乳酸菌が注目されています。腸の働きを助け、免疫力を高めます。桃山時代、上賀茂神社に奉仕する社家の邸内で栽培されたのが始まりで、珍しい高級品として上層階級に進物として用いられ、永く門外不出でした。
代々伝わるすぐきの伝統技法
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1
上賀茂特産のすぐきかぶらの皮を包丁で丁寧に剥ぎ取ります。(面取り)
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2
樽で一晩、塩をふり重石をかけて漬け込みます。(荒漬)
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3
繊維が柔らかくなったものを洗浄し、渦巻き状に一段ずつ塩をふります。
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4
テコの原理を利用した重石のかけ方「天秤押し」という方法で相当な圧力をかけ、本漬します。
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5
約40℃の加熱室・室(むろ)で約1週間、乳酸発酵をさせます。熟成した独特の香りと酸味が持ち味です。
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6
12月上旬頃から新漬を販売開始します。「塩」「重石」「室」の加減に伝統の技が生きています。よく水洗いし、かぶらはお好みの大きさに切り、葉は細かく刻み、お召し上がりください。チャーハンやパスタ、サラダにも活用いただけます。
三大伝統京漬物しば漬
鮮やかな赤紫色と熟成された酸味
大原は、水質が良く、寒暖の差が激しい気象条件により、色・香り・味の良い赤紫蘇が栽培されます。
夏場に、その紫蘇と茄子を塩のみで漬け込み、乳酸発酵させました。鮮やかな赤紫色と熟成された酸味、紫蘇の香りが食欲を増進します。
皇后・建礼門院への献上品
800年前、平家物語で有名な高倉帝の皇后・建礼門院が大原の寂光院で隠棲していた際、里人が献上したところ、大層お喜びになり、「柴漬」と名付けたと言われています。
京風味奈良漬
奈良漬を京風味に仕上げました
江戸時代中期、京都市右京区西京極で酒造業を営んでいました。京都 錦市場に移り、初代がその酒粕を利用し、当時、贅沢品であった奈良漬を京風味に仕上げました。
昭和40年、本店改装時に、嗜好品で贈答用と思われていた時代に、子供や女性でも食べられ、どなたにも親しまれるように、色も美しく、まろやかな味わいに進化させ、特別価格で提供したところ、大変好評で、今では桝俉の名物になっています。
上質の酒粕で熟成させた
桝俉の奈良漬
使用する瓜は徳島県産で、年明けまで、じっくり半年塩漬して寝かせます。その後、1年半かけて上質の酒粕に6回漬け替え熟成させます。塩分も4パーセントになり、独特の歯ごたえと芳醇な香り、口当たりの良い甘味と旨みが生まれます。
土用の丑の日に奈良漬を
毎年、土用の丑の日には、特に人気です。丑の日に「う」のつくものを食べると長生きすると言われており、夏バテ防止にうなぎを食べる習慣がありました。奈良漬とうなぎを一緒に食べることにより、豊富なビタミンとカルシウムを効率良く吸収し、胃の働きを活発にすることができます。
瓜の他、胡瓜・西瓜・守口大根・生姜、春は筍を限定販売しています。
錦 若冲漬
「煎酒」を隠し味に添えた
桝俉の創作漬物 若冲漬
今日の錦の繁栄の礎を築いた若冲の生誕300年記念に感謝と敬意を表し、当時の伝統野菜に調味料「煎酒」(純米酒にしそ梅干・鰹節・昆布を加えて煮詰めたもの)を隠し味に添え、現代風にアレンジした創作漬物を開発しました。
定番の「すぐき菜」「赤しそ」の他、春は「筍」秋は「本しめじの浅漬」を限定販売しています。
錦存続に命懸けで奔走した
中興の祖 伊藤若冲
江戸時代中期の奇想の絵師・伊藤若冲は、錦市場の青物問屋「桝屋」に生まれ、弟に家督を譲り、独創的な絵画を描き続けていましたが、営業許可を巡り、錦が存続の危機を迎えた際には、町衆として命懸けで奔走し、卓越した指導力で解決に導いた中興の祖であることが、近年の研究でわかりました。